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Tribal Rugs

トライバルラグ(部族絨毯)について

About Tribal Rugs

トライバルラグとは?

トライバルラグとは?
トライバル(Tribal)とは“部族の”という意味。「トライバルラグ」とは直訳すると「部族絨毯」。ペルシャ絨毯の中でも民族色の濃い、地方部族によって織られた絨毯のことです。(キリムもある意味部族のラグですが、ここでは毛足のある絨毯のことをそう呼びます。)
国土の広いイランには、有名な5大産地(タブリーズ、ナイン、イスファハン、クム、カシャーン)以外にも実に様々な産地があります。 地方色の濃いトライバルラグは、多種多様な遊牧民が暮らしてきたペルシャの特徴を表しています。 それぞれの産地の気候や風土によって色もデザインもバラエティに富み、深い味わいがあります。
現在私たちがよく目にするペルシャ絨毯の源流となっているトライバルラグは、素朴で温かみがあり、また、生活の知恵の中で育まれているために非常に実用性が高く、使い心地は抜群です。
それぞれの地方原産の素材にこだわり、昔からの技法によって時間に縛られず丁寧に手間暇をかけて作られている、大変質の良い絨毯です。使っているうちにだんだん柔らかくなっていき、その魅力に気がつくと愛着が沸き、一生物となるでしょう。
織りはペルシャ絨毯のしっかりとしたものですが、比較的カジュアルだったりシックだったりエスニックなテイストがあったりと、非常にお洒落で大注目のラグです。ヴィンテージを好まれる方にもおススメ。世界のハイブランドの広告やショーウィンドウなどでさりげなく敷いているのを目にしたこともあるはずです。
代表的なものはバルーチやトルキャマン(トルクメン)などですが、ロイヤルバザールでは日本ではなかなか見ることのできないレアな産地のトライバルラグもお取り扱いしています。
五大産地などのペルシャ絨毯についてはコチラ

トライバルラグの素材と特徴

トライバルラグの素材と特徴
ペルシャ絨毯やギャッベのように、トライバルラグも基本的にウール100%素材。保温性とともに通気性・放熱性が良いので冬は暖かく、夏はサラリとしています。また羊の毛の脂が汚れを弾くので、何かこぼしてしまったときもさっと拭き取れば染み込むことがありません。
ウールの個性によっては使い込むごとに光沢を増したり、色が変化していくものもあり、まただんだんしなやかに馴染んでいくものもあり、育てていくのが楽しいラグです。
弊社ではニュー・ラグ(製作後20年未満のもの)はもちろん、ヴィンテージ・ラグ(製作後20年~のもの)も豊富に取り揃えております。アンティーク・ラグ(制作後100年以上のもの)は非常に希少です。
ヴィンテージ・ラグはもちろん傷んだところを修繕し、クリーニングを施しています。毛が均等でなくなったラグは、毛足をシャーリング加工したりリメイクしたりして、ペルシャの人々はラグを最後まで大切に使いますが古くなったものにはまた味わいがあるものです。

トライバルラグの産地

トライバルラグの産地
ペルシャにはたくさんの部族がおり、また絨毯の産地が点在します。トライバルラグは弊社では各産地名(または部族名)で呼んでいます。そのいくつかを以下にご紹介します。
ムード・ビジャル(ビジャー)・ザンジャン・ヘリース・サログ(サルーク)・ケルマンの絨毯についてはコチラに記載しております。
アルダビル(アルデビル)
イランの北西に位置するカスピ海に面した緑の多いアルダビル州の州都アルダビルで織られる絨毯。アザリーというアゼルバイジャン・トルコ系の民族の居住地のためペルシャ中心とは少し異なる文化を持つ。歴史は紀元前2500年までさかのぼり、サファーヴィー朝(1501年 ~ 1736年)においては首都として政治・経済的に君臨。サファーヴィー朝は芸術を振興した王朝で、数々の優れた美術品を生み出し文化交流の面でも隆盛を極めた。この時代に制作された世界一大きな絨毯である「アルダビル・カーペット」がロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館に所蔵されている。
伝統的に絹および絨毯の交易で名が知られ、古来から伝わる製法で織られるアルダビル絨毯は世界中から高い評価を得ている。
直線的で伝統的な、シンプルなデザインが多い。主要な色は抑えられたピンクや渋く淡い赤色や緑色など。大きなサイズが一般的。ヴィンテージになればなるほど色や風合いが深い味を出す。素材はウールの中でも柔らかく、ノット数が低い(織り目が粗い)場合でも大変しなやかでふかふか。ほとんどが化学染料を使わない自然素材にこだわって作られている。
アルダビル(アルデビル)
ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館に所蔵されている
アルダビル・カーペット(1,052×554cm)
サナンダジュ(旧セネ)
イランの北西のクルド人が多く住む町。繊細で上品なデザインながら、頑丈で耐久性の高い絨毯を織る。セネとはサナンダジュの旧称で、セネのキリムも繊細でとてもかわいらしいものが多い。菱形やボテ柄(ペイズリー模様)またはヘラティ模様(菱形の花が四つのアカンサス葉に囲まれている柄)の反復で構成されており、基本色として赤と濃い青が用いられる。
サナンダジュ(旧セネ)
ハメダン(ハマダン)
イランの西部・アルヴァンド山麓のハメダン州の州都。イラン最古の町のひとつで、かつてメディア王国首都・エクバタナと呼ばれていた。観光地としても人気。絨毯の産地としてより周辺の村で織られる絨毯の集積地として知られている。
ミニアチュールが非常に有名な所だったため、それまで直線的であった絨毯の模様を美しい曲線を絨毯に描くことを初めて行った地域。染色は茜の根を使用した赤、藍染の青、それにハメダンの最も大きな特徴としてザクロの皮を染色に使用し、黄色を多用することで愛好者が増えた。
ハメダン(ハマダン)
ナハバンド
イランの西部・ハメダン州の町。サフランの集積地としても有名。幾何学模様と遊牧民らしい動物や鳥を配したデザインが特徴で、織りは細かすぎない分たっぷりとした厚みがある。何より光沢のある良質なウールが使われていて、高品質で耐久性にも優れているのが素晴らしい。落ち着いた色合いで床に馴染み、踏み心地もふかふか。
ナハバンド
サラバンド
イランの中西部・アラーキー(アラーク)の南西に位置する山間の地域名。
フィールド一面に配したボテ(ペイズリー)のデザインで有名。シックな細いボーダーに囲まれた小さなボテ柄や菱形のメダリオンや三角形など同じ柄がフィールド全面に繰り返され、上品で優雅な雰囲気。地の色は赤が多い。
サラバンド
アバデ
イラン南西部・ファールス州の郡都アバデは農産物の集積地として、また手工芸品の産地として有名。もともと花瓶文様を連続させた「ジリ・スルタニ」と呼ばれるデザインで知られていたが、昨今は遊牧民カシュガイ族からヒントを得て、赤褐色と青を組み合わせ、中央と四隅に大きいメダリオンを配するデザインが特徴となっている。フィールドには草花や小鳥や動物が織り込まれ、かわいらしい雰囲気だが、非常に丈夫で耐久性があるため実用性も高い。
アバデ
ヤラメ族
イラン中部・古都イスファハンの南方に暮らすヤラメ族。部族系の中でも非常に上質なトライバルラグを織る。菱形のダブル・メダリオンやトリプル・メダリオンが特徴。細かなボーダー部分やフィールドの鳥模様などが美しく、赤が基調だが青や緑、黄色や白といった色遣いのバランスも見事。パイル(厚み)は短めで、しっかりとした織り。
ヤラメ族
バクティアリ族
イラン西部・ザクロス山脈の東に広がる高原に暮らすバクティアリ族。部族系の中でも非常に高品質でバラエティ豊かなトライバルラグを織る。緻密な織りの高級品から実用品まで、非常に強く丈夫でどっしりとした絨毯が特徴。バクティアリで使われる羊毛は耐久性に優れ、デザインは創造性豊かで芸術的。色彩豊かで、代表的な柄に「ヘシティ」と呼ばれるパネル柄がある。ヘシティとは煉瓦を意味し、ペルシャ式庭園に由来する名でボーダーに囲まれたフィールド部分にいくつもの四角形の窓のようなパネルが配されその中に美しい草木や花が絵画のように織り込まれる。バクティアリのキリムも大変良品である。
バクティアリ族
カシュガイ族(ガシュガイ族)
イラン南西部・ファールス州のザクロス山脈周辺を遊牧しながら暮らすカシュガイ族。ギャッベを織ることで有名だが、魅力的なトライバルラグも織られている。自然豊かな遊牧生活をモチーフとして木々や草花、動物や人間、星や風景、幾何学模様などが織り込まれるが、中でも近年人気なのは動物柄。家畜として身近にいるヤギや羊、馬や鳥類はもちろん、家を守る強さの象徴であるライオンや豹、虎といったモチーフも注目を浴びている。カシュガイ族の服装にも見られるように色彩感覚も見事。基本的に設計図を起こさずに創造力のみで織るため、自由でおおらかな発想が絨毯にも反映される。個性的で手織りらしい味のこもったユニークな絨毯が多く、テントでの移動生活にも耐えうるような丈夫さも併せ持つ。また非常に寒暖差の激しい条件で飼われた羊の毛を使うので、柔らかくしなやかな絨毯に仕上がる。
カシュガイ族(ガシュガイ族)
シラーズ
イラン南西部・ファールス州の州都。古都で、ワインのシラー種の発祥地でもあると言われている。農工業や観光でも有名な文化の中心地であり、絨毯の製造というより周辺の部族の絨毯がシラーズのバザールに集積されることで知られている。この辺一帯のファールス州の絨毯織りの技術はユネスコの世界無形文化遺産に登録されている。
シラーズ
シラーズのナスィーロル・モルク・モスク
グーチャン
イラン北東・コーラサン州グーチャン郡の郡都。クルド人が多い。薄めの作りで大胆な幾何学模様が特徴。抑えた色合いで素朴な風合い。近くのトルキャマン(トルクメン)やバルーチの影響も受けている。渋みのある色合いにかわいい動物柄が配されたグーチャン・キリムも人気である。
グーチャン
トルクメン族(トルキャマン族)
イラン北東・トルクメニスタンとの国境付近に居住する複数の部族。国家や部族同士での闘争の歴史があり、部族のアイデンティティーを表す紋章のような「ギュル文様」のデザインが特徴。大きなメダリオン等より小さなギュルの反復模様が多く、色は濃い赤や茶色といった渋めのものが多い。薄くてしなやかな質感で人気が高い。
トルクメン族(トルキャマン族)
バルーチ族
アブガニスタンとの国境付近のバルチスタンと呼ばれている地域に居住する複数の遊牧系部族。バルーチラグは人気が高く、生産量も多い。トルキャマンやアフガニスタン絨毯とも関係が深く、パキスタン等にも影響を与えている。宗教色が濃いデザインのお祈りラグ(イスラム寺院に祈祷用に持っていくラグ)など、意味のあるモチーフが織り込まれる。縦糸にヤギやラクダの毛を混合して使ったものもある。パイルは薄め。地の色は暗めなものが多く、アンティーク調の家具と非常に相性が良い。イランのマシュハド市では「マシュハド•バルーチ」、アフガニスタンのヘラート市では「ヘラート•バルーチ」として売られている。
バルーチ族