About Kilim

キリムについて

About Kilim

キリムとは?

キリムとは?
キリムとは、遊牧民が織る平織りの敷物です。
キリムの語源はペルシャ語で「ざっと広げる」を意味するGelimから来るものだと言われています。ペルシャは世界でも最高の技術を持つキリムの産地と言われており各地方によってそれぞれ特徴あるデザインや素材・色のキリムが心を込めて製作されています。
その歴史は絨毯より古く、織り方は縦糸に横糸を絡ませるシンプルなものです。絨毯のようにパイル糸を結ぶ作業がなく、いわゆる平織りです。
キリムはもともと遊牧民が移動しながらのテント生活をする際に、折りたたんで持ち運ぶことのできる敷物として便利な生活必需品でした。また、敷物としてだけではなく、衣類や布団や食料品を収納するバッグとして、またときには赤ちゃんのゆりかごとしてなど万能品として活躍していました。
丈夫で長持ちする素材を使い、冬は暖かく夏は涼しく、薄手で運びやすいキリムは遊牧民たちの暮らしを支え続けてきたのです。各民族によって親しみのある素材やデザインが用いられ、それは次第に生活を彩る装飾品として、また伝統工芸品として美術的価値を持つようになりました。その伝統技術は母から娘へと受け継がれ、嫁入り道具として財産の一部ともなりました。
ペルシャ絨毯が富裕層に好まれたことに比べて、キリムは貧しい人たちのものと長い間みなされてきましたが、1950年頃になってから爆発的な人気を獲得します。ヨーロッパの敷物の専門家やイスラム美術研究家たちの目に留まったのです。その熟達したデザインと発色・織りの技術から、インテリアのお洒落なアイテムとしてまたたく間に広まり今では世界中の人たちに愛されています。絨毯の初心者コレクターはキリムからコレクションを始めることが多いと言われています。パイル織りのペルシャ絨毯より一般的に安価だからですが、近年ではアンティーク・キリムや高品質のキリムなど高い価値を持つものもたくさんあります。

キリムの素材・デザイン

キリムの素材は、主にウール(羊毛)ですが、ラクダ・山羊・馬・シルク・綿などといった素材もたまに見られます。現在では化学染料を用いたものもありますが、基本的には先祖から伝わる伝統技術に沿って原毛から手で紡いで糸を作り、天然染料を使って模様を再現します。そのためたいへん手が込んであり作り手の真心がこもっています。
産地によって身近な材料も違い、デザインのオリジナリティーも保たれているため、実に多様な種類があります。モチーフになるのは主に自然のもので、各民族にとって親しみのある小動物や人間・植物など。そして伝統とともに趣向を凝らされた幾何学模様などが鮮やかに彩られています。また、豊穣や幸福・厄除けや子孫繁栄・健康や御守りといった部族の願いが込められている文様も多数あります。
キリムの素材・デザイン
キリムの素材・デザイン
キリムの素材・デザイン
キリムの素材・デザイン
キリムの素材・デザイン

キリムの文様例

その一方で元来実用品であるキリムは、丈夫で長持ちして退色がしにくいものとなっています。キリムは使うほどに味わいが出て、柔らかくなってくるのが特徴です。
実際にキリムを部屋に敷いてみると、素材やモチーフが自然のものであるためかフローリングでもマットでも、絨毯や畳の上でも不思議とマッチします。また敷物としてだけではなく、絵画のように壁掛けなどにして楽しむことができます。
キリムの素材・デザイン
キリムの素材・デザイン

キリムの織り方

キリムの織り方
スマック織りのキリム
キリムは基本的に平織りです。日本のつづれ織りのように縦横の糸を直線で交差させる織り方ですがそれ以外にも工夫を凝らした織り方があります。
色を変えるときはスリット織りと言って横糸の端を縦糸に巻き込みます。そこにわずかな切れ目ができます。この技法を使ったキリムはリバーシブルで使えます。その切れ目を出さないようにつなぐのがつなぎ織り。またつなぎ部分を結ぶのがダブルつなぎ織りで、より繊細で強いキリムとなります。
また直線ではなくカーブで織る曲線織りがあります。細かなパターン模様や花柄など、より装飾的な表現ができる技法です。
ジャジーム(ジャジム)織りは横糸一色に対して数色の縦糸で織る技法。テントで使う細長いキリムに使われます。数枚を繋ぎ合わせて大きくしたりします。
スマック織りは強く美しいキリムが生まれる技法です。絨毯のパイルのような厚みはできませんが、横糸に通した縦糸の他に、さらに新しい縦糸を巻き込んでいくのでとても複雑な模様ができます。一見すると刺繍のように見えます。また「小さく楽しい」を意味するシジム織りも刺繍のような技法です。

年代物キリムについて

代表的な5大産地
こうして一部のものは美術品の域にまでになったキリムの世界には、製作されてからの年月によってその呼び方があります。製作後20年未満のものをニュー・キリム、製作後20年以上50年未満のものをセミ・オールド・キリム、製作後50年後以上100年未満のものをオールド・キリム、そして製作後100年以上のものをアンティーク・キリムと呼びます。
アンティーク・キリムの中には、世界の美術愛好家たちから称賛され、オークションにかけられているようなものもあります。また、世界の有名な高級ホテルやレストランなどでも、度々こうしたキリムの姿を見ることができます。
なお弊社では基本的に、オールド品に特別な付加価値は付けておりません。年代物でも新しい品と同様にご提供できる品もございます。

ジャジーム(ジャジム)やソフレなど、遊牧民の道具たち

市場にあまり流通していないペルシャ遊牧民の素朴なキリムがあります。
例えばジャジーム(ジャジム)。ほとんどがセミ・オールド~オールドです。テントに掛けたりさっと敷いたりと、遊牧民の便利な道具だったものです。日本で言うゴザのような感覚でしょうか。人が寝そべることができるぐらいの長細いサイズが一般的です。非常に色鮮やかで遊牧民の遊びのセンスが見られます。
またソフレというキリムは、基本的に食事をするときに絨毯の上に敷くものです。床の上で家族が車座になって一枚のソフレを囲みます。巨大なランチョンマットと考えていただいていいでしょう。テーブル的なサイズものがほとんどです。
さらに珍しいものではナマクダンという砂漠で塩を入れて運ぶもの、ホルジンという馬やラクダや自転車に付けるサドルバッグ、持ち手のついた布団袋など、ユニークで貴重な品があります。現地でも昨今はモダン化して新しく製作されることがなくなっているので、非常に希少です。カジュアルに使われていたものなので、いい具合にヴィンテージ感を出していて、古いものが好きな方にはお勧めです。ジャジームやソフレはアウトドアの雰囲気にも合うので、キャンプやピクニックに持っていくととてもお洒落です。ナマクダンやホルジンは装飾的なので、インテリアのディスプレイにもいいでしょう。

ジャジーム
ジャジーム
ソフレ
ソフレ

キリムの産地

キリムの産地
ペルシャには上質なキリムを織る産地がたくさんあります。そのいくつかを以下にご紹介いたします。
バクティアリ族
独特のデザインを誇り今では少なくなった民族独自のオリジナリティーを持つキリムの産地として世界中のファンが注目している。
縦糸は綿、横糸はウールを用いて非常に頑丈に作られており、実用性や耐久性にも優れている。バクティアリのキリムにはペルシャ絨毯織りの技術であるパイル式技法が取り入れられていることもあり、それが最高峰と言われるゆえんである。多彩で複雑な刺繍を施しながら素朴な味わいがあり、色は赤を中心として黄色・オレンジ・青など明るいコントラストが見事。
バクティアリのオールド・キリムやアンティーク・キリムはたいへん数が少なくなっており、年々その希少価値が増している。
バクティアリ族
バルーチ族
縦糸に綿もしくはウール、横糸にウールが用いられる。落ち着いた色合いと繊細な模様が特徴で、たいへんな手間とこだわりの材料を使い織り上げられている。バクティアリとともにキリムの中でも世界最高峰との呼び声がある。
バルーチ族
コーラサン(コラサン)
アフガニスタンと旧ソビエト領に隣接しており多人種の住む地域。そのため多様なキリムが産出されているが、現在ではこのコーラサンのキリムを市場で見かけることは少なくなっている。素朴でかわいいグーチャンのキリムやスマック織りのシルジャン、ソフレなどの産地。
コーラサン(コラサン)
シャーサヴァン族
トルコ・コーカサスのキリムと近いデザイン。馬の背にかけるホースカバー用キリムや布団袋(マフラシュ)などが有名。ユニークで美しい彼らの品は、現在では美術的価値が高くなっているものも多い。
シャーサヴァン族
トルクメン族(トルキャマン)
優れた絨毯を織ることで名声のあるトルクメン。ペルシャ絨毯からヒントを得たモチーフと色遣いが見事。赤みを帯びた色合いのキリムが特徴。
トルクメン族(トルキャマン)
トルクメンの家族
クルド族
クルド族はイラン、トルコ、イラクの広い地域に住む人々。トルコ国境に近いセネでは、花模様の反復が美しい繊細で華やかなキリムが織られている。なお「セネ」は現存しない村の旧称で、キリムの名産地として未だその名が残っている。現在は「サナンダジュ」という地名となっている。
クルド族
セネのキリム
カシュガイ族
ペルシャ産キリムの中で最も有名なもののひとつ。カシュガイの作るキリムにはバリエーションが多く、世界中にファンがいる。色とりどりの幾何学模様のキリムが特徴。ジャジームの産地でもある。
なおカシュガイ族はギャッベを織る遊牧民としても有名。
カシュガイ族